薪ストーブの構造
薪ストーブとは、鋳鉄または鋼板製の密閉された箱型の本体の中で、薪を燃焼させる暖房器です。よく「暖炉」と同じに捉えられることが多いですが、両者の違いは、燃焼室内への燃焼用空気を調節できるか否かという点です。一般的に開放型の暖炉は、燃焼室が囲われていないため、燃焼用空気の微調整機能がありません。対して薪ストーブは、必要な空気量を制限し、過燃焼を防ぐように設計されているため、薪の持ちが良い→燃費が良いという利点があります。
さらに薪ストーブには、未燃焼ガスをさらに燃焼させる、二次燃焼機能を持っているものがほとんどです。この機能により、煙に含まれるススを減らし、煙突から排出される微粒子ができる限り少なく、より環境に優しいものへと進化しているのです。
薪ストーブの排気は、煙突からのみです。室内に燃焼後のCOやCO2が流出することがないので、室内の空気が汚れず、また結露も発生しにくくなります。煙突は必ず設置しなければならないのはもちろんのこと、効率良く排気させるためには、煙突のプランニングがとても重要となります。正しく煙突を設置すれば、素早く上昇気流を起こすことで燃焼を促進し、煙をスムーズに排出させることができるのです。
薪ストーブの暖かさのしくみ
薪は、乾燥木材1kgあたり約20メガジュール(MJ)の熱エネルギーを持っています。 およそ、5.6キロワットアワー(kWh)の熱量です。 これが薪ストーブで適切に燃焼をする場合、20MJのほぼ全てがロスなく熱になります。 煙突からは暖かい空気が出ていくので、全体の2〜3割程度の熱が煙突から逃げていきます。
室内の暖房に使用される熱として、乾燥木材1kgあたり約4kWhの熱が使用されます。 つまり、薪ストーブで1時間に1kgの薪を焚けば、約4,000ワット(W)の熱出力が得られることになります。 2時間なら約8,000Wです。 4,000W級、8,000W級は家庭用の暖房器具としては最大級の熱量である、と言うことができます。
参考 エアコン - 約2,200W 石油ストーブ - 約2,240W ガスファンヒーター(都市ガス) - 約4,070W
輻射熱(赤外線)による暖房効果
赤外線は、電磁波の一種です。 およそ0.8マイクロメーター(μm)〜1mmの波長の電磁波を、赤外線といいます。
もう一つは、空気の流れ(対流)を利用した暖房方法です。通常空気は、温度の高い場所→温度の低い場所へ流れる性質があります。薪ストーブから発生した暖かい空気が上方に向かって流れ、部屋の中を対流して全体を暖める方式です。この対流方式の利点は、素早く均一に室内を暖めることができるということです。
<赤外線の特徴>
・赤外線は、ほぼ全ての物体から放射されている。
・温度の高い物体ほど、赤外線を強く放射する。
・人体、自然素材、ガラスなどは赤外線を吸収する。
・一方、ピカピカに磨かれた金属は赤外線を反射する。
・人体や物体などに吸収された赤外線は、その表明で直ちに熱に変わる。
温度の高いストーブからは強い赤外線が放出されます。 ストーブから出る赤外線を直接浴びる。 そしてその一部は人体に直接放出されるので、カーッと強いエネルギーを人体は浴び感じることができるのです。
一般に使われるエアコンやファンヒーターは電気や灯油によって発生させた暖かい空気をファンで強制対流させる100%対流型の暖房です。それに対し、薪ストーブは、輻射熱あるいは輻射熱と対流の相乗効果により、穏やかで人が心地よいと感じる空間を作り出すことができるのです。